「ボッチプレイヤーの冒険 〜最強みたいだけど、意味無いよなぁ〜」
第82話

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自キャラ別行動編(仮)
<愛妾からの御招待>



 散々フラグを立てたその夜。
 当然のごとく、ゾンビやスケルトンの大量発生事件もワイトなどの強力なアンデッドの襲来事件も起こらなかった。
 当たり前よね、だってここは一応現実の世界なんだから。
 
 それから数日間の間様子を見てはいたんだけど、墓地周辺は平和そのもの。
 私の想像は完全に外れたと言う事みたいだね。



 衛星都市とは言えイーノックカウはバハルス帝国の中でも比較的大きな都市だ。
 そんなこの町を私たちは色々な場所を、大きな商会だけでなく町にある小さな店や雑貨屋、屋台に並べられた商品など、この町に住む人たちの生活というものを垣間見られる場所をとにかく見て周った。
 そんな日々の中で、私はある事に気が付いていた。

 私がこの都市へきて数日たった、ある日の事。

 「ねぇカルロッテさん、なんか日に日に町を歩く人が増えていく気がするね」

 「そうですね、まるん様。多分それだけ戦争が近いということなのでしょう」

 町を行きかう人々を眺めながら、私たちはそんな事を話していた。
 
 ここ衛星都市イーノックカウは、リ・エスティーゼ王国とも危険なトブの大森林とも離れている為住人が危険に晒される可能性が低い事から、毎年戦争が近づくこの時期になると帝都や西にある都市から一時避難して来る者が増える。
 その為、いつもよりも行き交う人が増えて、今この都市はいつも以上に活気に溢れていると言うわけだ。

 「戦争自体は迷惑な話だけれど、それも私たちからしたら遠く離れた場所での事だし、そのおかげで西の方の商人もこの町に商品を持って批難してくるから、普段は扱っていない珍しいものが露天やお店に増えて返ってラッキーよね。わざわざ足を運ばなくても見たり買ったりできるもの」

 「ふふふ、確かにそうですね。少々不謹慎な気もしますけど」

 カルロッテさんはこう言うけど、この国では戦争をするのは職業軍人だけで農民や商人、職人は徴兵されない。
 戦争をする職業の人たちだけでやるのなら、それによって私たちが恩恵を受けたところで何も問題はないと私は思うんだけどね。



 そんな風に戦争によって起こる事が、私たちにとって都合のいい事だけだろうなんて思っていた時期もありました。
 そう、この頃までは。



 そんな話をしていた次の日の夕刻。

 「え? 私にお客さんですか?」

 その日、私たちが宿泊している宿に帰ると、入り口で支配人さんに声をかけられた。

 「はい。先程からロビー奥のラウンジでお待ちになられております」

 う〜ん、誰だろう? 私がこの町で知っている人といえばライスターさんたちくらいだけど・・・。
 そう思いながらラウンジに向かうと、そこにはカロッサ子爵さんのところの筆頭騎士であるリュハネンさんが申し訳なさそうな顔をして立っていた。

 ん、なんか嫌な予感。
 あの顔はどう見ても厄介ごとを運んできたって顔よね。

 思わず回れ右して逃げたくなる気持ちをぐっと抑える。
 だって、この人やカロッサさんには色々と助けてもらっているもの。
 いくら面倒くさそうでも、無碍にするわけにはいかないものね。

 「こんにちは、リュハネンさん。今日はどうなされたのですか?」

 「まるん様、ご無沙汰しております。実は大変申し上げにくいのですが」

 リュハネンさんはそう言って本当に申し訳なさそうな顔をする。
 そして、

 「この国の皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス陛下の愛妾であらせられますロクシー様が都市国家イングウェンザーの方と御会いになられたいと申されまして」

 「はぁ・・・はあっ!?」

 ななな、何を言い出すんですか、この人は。
 そりゃあさぁ、リュハネンさんと馬車の旅をご一緒したのだからこの都市の領主とかと会う可能性はあるかもなぁなんて私も思っていたわよ。
 でもそれを飛び越えて、いきなり皇帝縁の人に会えって?

 愛妾ってあれでしょ、妾の中でも特に皇帝に気に入られているって人でしょ。
 そんな人と会うなんて、私には荷が重いよ。

 「どどどっどうしてそんな話になったんですか!」

 「それなんですが、ちょっとその前に」

 そう言うとリュハネンさんは少し話が長くなるからとウェイターを呼び、人数分のお茶を用意させた。
 私たちも立ったまま話を聞くわけにもいかないので会談できる場所に移動し、それぞれソファーに座って彼の話を聞く事にした。

 「実はですね、私もまったく想定しない事が起こりまして。事の起こりはアルフィン様がエントの村で村長にお渡しになられたルビーが発端なのです」

 「ルビーと言うと、情報量代わりにと価値を知らなかったアルフィンが渡した”あの”小さなルビーの事ですか?」

 その話なら覚えてる。
 マスターがカロッサさんの所で聞かされて驚いたって言ってたもの。
 でも、あれをどうしたらこんな事態になる訳?

 「はい。実はあの品、子爵が村から買い取ったのですが、何せ金貨5000枚もするほどの高価なものです。子爵もそれほどの価値があるものを手元においておくほどの余裕はなかったので今回イーノックカウに訪れた際、商業ギルドに買い取ってもらいました」

 「へぇ〜、そうなんですか」

 確かに地方領主であるカロッサさんからすれば小さなルビーを持っているより、領地の運営資金として金貨に変える方がよっぽど有意義だと思う。

 「そのルビーなのですが、どうやら王国との戦争がもうすぐあると言う事で万が一に備えてこの都市に疎開なされている陛下の妾たちの元に持ち込まれたそうでして」

 「ああ、それでロクシー様という方の目に止まったのですね」

 なるほど、この宝石はどこから齎されたのかと気になった訳か。
 そう私は思ったのだけど、実はそうじゃなかったみたいなのよ。
 この話には続きがあったの。

 「いえ違います。確かにあのルビーは透明度が高く素晴らしいものでしたが、それだけであれば王宮に行けば他にも存在する物ですから。問題はその後に起こりました。それと同等の価値のあるルビーと、同じく素晴らしい品質のエメラルドとアレキサンドライトが商業ギルドに持ち込まれ、それもまた皇帝の妾たちのところに持ち込まれたのです。一つだけならともかく、これだけの高品質の宝石が何品もこの地方都市に持ち込まれるというのは異常な事でして、そこにロクシー様は興味をもたれました。そこで出所を商業ギルドの者にお尋ねになられたところ」

 「なるほど、カロッサさん縁の者が持ち込んだと説明したんですね」

 うわぁ、思いっきり私のせいじゃない。
 でもでも、まさか宝石を売ったくらいでこんな事になるなんて思わないでしょ。

 「その上、同時に希少金属まで持ち込まれたというのもお耳に入ったそうで、そんな物まで手に入れることが出来る者が居るのであれば一度会ってみたいと私のところまで使者が参った次第です」

 「ああ、そう言えばミスリルとオリハルコンも少し売ったね・・・」

 私はそう言って遠い目をする。
 どうしてこうなった。

 いや理解できるよ、話を聞けばその訳も理由も。
 でもなぁ、それなら、

 「でもそれならば商人として会うという選択肢もあったんでしょ? なのになぜ”都市国家イングウェンザー”の者と会うって話になってるんですか? どうしてイングウェンザーの存在までそのロクシー様という方に伝わっているのです?」

 「それに関しては私が悪いわけではありません。子爵とライスター殿、特にライスター殿に対して抗議をしてください。子爵は書簡の中にまるん様は都市国家イングウェンザーの貴族商人の家の者であると記載しておいたそうです。そうする事により、まだ御小さいまるん様相手ででも担当の者がしっかり相手をすると御考えになられたのです。」

 「ああそうなんですか。それはお心遣いありがとうございます。しかしそれだけなら貴族商人相手と言う事になるので都市国家イングウェンザーの者という言い回しにはならないですね。と言う事は」

 「はい、ライスター殿から漏れました」

 リュハネンさんの話しからするとこう言う事情らしい。

 ライスターさんは自分の部隊に到着すると上司にカロッサ子爵の所での事を報告した後、部隊でお土産だと言ってお酒をその上司と先に帰っていた部下たちに振舞ったらしい。
 それがあまりに美味しかったからそれをどこで手に入れたかという話になったそうで、その際に都市国家イングウェンザーのアルフィン姫とシャイナ様から頂いた物で、この都市への帰還の際もまるん様の素晴らしい馬車に乗せてきて貰ったと、そして私もそのイングウェンザーの支配階級だと酔った勢いで話してしまったみたいなのよ。

 そしてその話がロクシー様という方の耳にも入ってしまったようで、それならばその国の者と御会いしたいという話になってしまったらしい。

 「そう言う訳ですのでまるん様、どうかロクシー様に御会いしていただけないでしょうか?」

 「無理です! 無理無理! 私にはそんな大役はできません。だって私、まだ子供ですよ。それなのにこんな大国の皇帝様の愛妾の相手なんて。絶対無理です!」

 断固拒否! 大体、外交関係はマスターとアルフィン担当なんだから私なんかが出来る訳がないじゃないの。
 だって私は偉い人と話をする練習もしてないし、そのスキルも無いんだから。

 「これこの通り、そこを何とか。私ども子爵家ではロクシー様の御言いつけを断る事はできないのです。もしそんなことをしてしまえば子爵の立場が危うくなってしまいます」

 「そんな事を言われたってぇ」

 無理なものは無理よ。
 ただの貴族相手ならこちらも同格であるって感じで対応出来ない事も無いけど、相手は皇帝のお気に入りでしょ。
 私の対応が不味くて戦争になんて事になったら大変じゃない。

 そうなったら手加減できないから下手をするとこの国、滅ぼしちゃう事になるよ。
 そんな事になったらユーリアちゃんたちとどんな顔して会ったらいいか解らなくなるじゃないの。

 「そうだ! そのロクシー様という方と会うと言うのは何時の話なんですか? 時間があるのならアルフィンたちを呼び寄せて」

 「すみません、ロクシー様もお忙しいお方なので。急なお話で申し訳ないのですが、明後日の午後に御会いしたいとのことです」

 うがぁ〜! 本当に時間が無いじゃない。
 常識的な考えで言えば、この都市とイングウェンザー城の位置関係からすると今から伝令を出して、急いで来てもらったとしても間に合わないじゃない。
 もしかして積んだ?

 「私は絶対に無理ですからね! そんなの自信ないです」

 私のその言葉にリュハネンさんがソファーから立ち上がり、その場で平伏、所謂土下座をする。

 「お願いします。もし御会いしていただけなければ子爵の立場が本当になくなるのです。これ、この通りお願いいたします」

 や〜め〜てぇ〜! いかにも位の高そうな騎士がそんな格好をするからすっかり注目の的じゃないの!

 イタイイタイ、周りの視線が本気で痛い。
 ああ私、もう泣きそうよ。

 「う〜もう! 仕方がない、最後の手段を使うしかないわね。リュハネンさん、今回の私がやった事は絶対他言無用でお願いします。カロッサさんにも秘密にしてください。それが約束できないのであればこの話はお断りします」

 「おお、それではお引き受けしてくださるのですね? ありがとうございます。絶対に秘密は守ります。本当にありがとうございます」

 本当にこれは最後の手段だ。
 だってこの国の常識ではありえない事を行うのだから。

 「それでは一旦私たちの部屋に行きましょう。ここで話せる内容ではないので」

 「はい」

 私たちは人目を避けるために借りている自室に戻った。



 「アルフィンを呼びます。そして彼女にそのロクシーさんという方の相手をしてもらいます」

 「え? ですが、今から使者を送ったのでは間に合わないのではないでしょうか? 確かにあの馬車ならば今晩の内に城に到着する事でしょう。しかしアルフィン姫様は今農業指導の為、ボウドアにご滞在とか。それならばロクシー様と御会いになるには準備の時間が」

 そうだよね、常識的に考えたら絶対無理だよね。
 だから口止めしたんだよ、最後の手段を使う為に。

 「ええ、馬車では間に合いません。だから通信の魔法を使います」

 「通信の魔法? もしや<メッセージ>の魔法ですか?」

 あれ? この世界にも<メッセージ/伝言>の呪文、あるのか。
 はぁ、ならこんな大騒ぎする必要なかったんじゃないか。

 「ええ、そうです。なんだ、メッセージの魔法を知っているのなら時間的余裕ができる事、解っているんじゃないですか」

 その私の言葉にリュハネンさんは静かに首を横に振った。

 「いえ、私の知る限り<メッセージ>の魔法は信頼性が薄く、また距離が離れればその精度はより落ちると聞いています。まるん様はこの場所から遠くはなれたイングウェンザー城まで正確な情報を送れるほどの<メッセージ>の魔法を操る事ができるのですか? 流石アルフィン姫様に次ぐ地位の御方だ」

 うわぁ、この世界の<メッセージ>ってそんなに精度が悪いのか。
 それじゃあ、連絡ができないって思うのも無理は無いよね。

 「わっ私たちの国で使われている<メッセージ/伝言>の魔法は、もしかするとこの国のものとは違うのかもしれないですね。あっと言う事はこれはあまり他の人に知られてはいけない情報なのかも。情報伝達手段と言うのは強力な武器になり得る代物ですものね。これは他言無用で」

 「はい、解っております、先程のお約束、忘れては居ませんよ。これで連絡はいいとしてですが、アルフィン姫様はどのようにこちらへ。やはり空を飛んでこられるのでしょうか? それとも多くの兵をこの地に運んだと言う転送魔法で?」

 ・・・へっ?

 「どどど、どうしてそんな発想が? あっアルフィンが空を飛んだり多くの兵を遠くに運べるってなぜ知ってるんですか!?」

 「あっ!」

 途端に目をそらすリュハネンさん。
 うわぁ、とんでもない失言をしてしまったって顔してるよ、この人。

 「リュ・ハ・ネ・ンさん?」

 「しっ知っている訳ではありません。今までのイングウェンザー城周辺の情報やアルフィン姫様の行動から推測しただけです」



 リュハネンさんの話によると、最初にエントの村に都市国家イングウェンザーの姫君であるアルフィンが護衛もつけずに一人で歩いて現れたのは、きっと馬車から御付の者が目を離した隙に魔法で空を飛んで脱走して訪れたからではないかと考えたんだって。
 次に城からボウドアの村への道が短時間で作られた事も予測に一役買ってるんだって。
 これだけの大工事、本来なら大量の工員や兵を送り込まなければできない事なのにそれだけの人数が移動した形跡が見られないし、近隣の町から人を集めた形跡も無い事から、一瞬で多くの人員を運ぶと言う神のごとき魔法が使われたのではないかと推測したんだって教えてくれた。

 はぁ、当たらずとも遠からずだよ。
 実際ボウドアの村へマスターは空を飛んで行ったし、工事の為に兵を呼んだり帰したりはして無いけど、アルフィンはゲートの魔法が仕えるからやってやれないことは無い。
 しかし、たったそれだけの情報でそこにたどり着いたのか。

 ねぇマスター、私たち、この地の人たちの事、甘く見すぎてたかもよ。

 「なるほど、それがばれてたのならアルフィンが神様扱いされてもおかしくないか」

 「ではやはり飛んだり、大量の兵を運ぶ事ができるのですね!?」

 う〜ん、断言は避けたほうがいいよね。

 「ノーコメントです。ただ、この話が出た事やこの手の魔法が使えるかも知れないという話も他言無用で。当然カロッサさんにも内緒でお願いします」

 「解りました。ですが子爵がよほど危機的な状況に陥った場合は、御伝えしても宜しいでしょうか?」

 「流石に命の危険があって助けてほしいと言う状況なら仕方が無いのでその時は許可しますが、それ以外は秘密でお願いします」

 「解りました」



 こうして話し合いを済ませた後、リュハネンさんの相手をギャリソンたちに任せ、私は一人寝室に入った。

 「とにかくアルフィンに連絡しないと・・・って待てよ」

 この話、マスターに正直に教えていいものなんだろうか?

 マスターは何事にも用意周到に準備する。
 それは失敗してはいけない内容の時ほど顕著に現れる傾向だ。
 その上マスターは面倒な事を嫌う傾向にもあるのよね。

 「今回の事って間違いなく面倒ごとよね。そして間違いなく失敗出来ないケース。う〜ん、逃げようとする姿が目に浮かぶわ」

 詳しい話をしたらアルフィンに丸投げしそうだなぁ。
 でも、いかにアルフィンと言えどもこれは流石に荷が重いだろうし、誓いの金槌の行く末にも関係してくる内容だからどうしたってマスターに出張ってもらわなければ困るのよね。

 「うん、マスターには詳しい話は内緒で来てもらおう」

 そうと決まればアルフィンへのメッセージも慎重にやらないと。
 アルフィンに詳しい内容が伝わってしまえば、マスターが中に入った時にばれてしまうかもしれないからね。

 と言う訳でなるべく多くの情報が伝わらないよう、最小限の内容だけでマスターたちに来てもらわないといけないわけか。
 となると余計な事は言わず、こちらが大変な事になっているという事だけを伝えて来てもらうのが一番ね。
 うん、とにかく緊迫感が伝わるように話さないと。

 ちゃんと話す内容を予め決め、きちんと心構えをしてからアルフィンに<メッセージ/伝言>を送る。

 「あるさん! 聞こえる? まるんです」

 「あらまるんちゃん、どうしたの? そんなに慌てて。何か問題でも起こったのかしら?」

 のんびりとしたアルフィンの声が頭に響く。
 この口調相手だとついつられそうになるけど、そんな事でひび割れていては仮面をかぶった意味がない。
 私はさも緊迫していると言いたげな口調でアルフィンにまくし立てた。

 「緊急事態が発生したの。マスターに救援要請をお願い。あなたの体に入ってもらってぇ、そうね、シャイナにも同行してもらってこちらに来て欲しいの。詳しい事は時間も無いからこちらに来てから話すわ」

 マスター一人より、シャイナが一緒に来た方が護衛にもなるし、華やかさが増していいよね。
 うん、我ながらいい考えだ。

 「えっ? えっ?」

 私の勢いについて来られないのか、アルフィンは戸惑った声で疑問の声ばかりを上げる。
 可哀想だとは思うけど、でもここで勢いを止めて話すとボロが出そうだからそのまま放置。

 「でも都市の入り口を通らず、いきなり町に転移すると後々面倒な事があるかもでしょ? だから、明日の10時になったらイーノックカウの東門から外に馬車を迎えに出すから、それを遠隔視の鏡で確認して飛んできて頂戴。あと、どうしても無理なようならそちらから連絡頂戴ね。それじゃあ私も忙しいからこれで通信終わり! あるさん、頼んだわよ」

 「えっ? えっ? ええぇ〜!?」

 混乱状態のアルフィンを無視して、私は<メッセージ/伝言>の魔法を解除した。

 ふふふ、勢いで貫き通してやったわ。
 マスターがとても手が離せないような緊急事態に陥っているのなら私にも伝わっているはずだからそれはないだろうし、これできっと来てくれるわね。

 「さぁて、お次はっと」

 私は再度<メッセージ/伝言>の魔法を使う。
 通信相手はセルニアだ。

 「てんちょ〜、聞こえる?」

 「あっまるん様、聞こえますよぉ〜。どうかしたんですかぁ?」

 先程アルフィンに送ったのとは違ってのんびりとした口調でメッセージを飛ばしたおかげか、いつものようにのんびりとした口調でセルニアは返してくれた。
 セルニアには私の味方になってもらう必要があるから、先程のような演技は無しで。

 「あのねぇ、あるさんとシャイナに”いつもみたいに"いたずらをしかけるから手伝って」

 「えぇ〜、またですかぁ。私、後でメルヴァさんに叱られるの嫌ですよ。手伝うのはいいですけど、ちゃんと私は悪くないって説明してくださいね」

 セルニアには私とあいしゃのいたずらをよく手伝わせているから話が早い。
 まぁ、今回は本当はいたずらじゃないんだけど、そう言った方が話が早いからね。

 「うん大丈夫。今回のはそれ程酷いいたずらじゃないから。あいしゃもいないし、私がこっちで暇だからアルフィンたちをだましてここに呼んで、遊んでもらおうってだけだし」

 「ああ、それなら大丈夫ですね。でもアルフィン様たち、お忙しいんじゃ?」

 そうだね、それは気にするよね。
 何せ二人とも今は城の外に出ているのだから。
 と言う訳でフォロー、フォローっと。

 「それは多分大丈夫よ。あるさんの農業指導はもう終わってるだろうし、シャイナの方はミシェルとユカリが居るからシャイナ居なくても問題ないからね」

 「なるほど、それなら問題ないですね」

 そう明るい声でセルニアは返してくれた。
 よし、言いくるめ成功。

 思いの他作戦がうまく行き、ほくそ笑みながらこの後セルニアにやってもらう事を話すまるんだった。


あとがきのような、言い訳のようなもの



 初めてオーバーロード本編ののキャラクターがアルフィンたちに絡んできました。
 このキャラが登場する回からオーバーロード本編のキャラが続々と出てくるようになり、一気にオーバーロード二次らしくなると思います。
まぁ、前から書いている通りナザリック勢は出ませんけどね。

 でも本当はこの話、40話くらいで到達するはずだったんですよね。
 それなのに実際は82話って、ドンだけ展開が遅いんだって話です。

 本編も本当は50話くらいで完結するはずだったのに何時まで続くのやら。
 おかげでボッチ完結後に書くつもりだった賢者の連載を我慢できずに不定期で始めるなんてハメになってしまいましたがw


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